カガミさん

 金魚を一匹買うときは水槽の近くに鏡を置いておくとよいといいます。金魚は鏡に映った自分を、お友達だと思ってさびしくなくなるから。

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 僕は無性に鏡がほしくなったのです。こう、全身が写せる大きなおおきな鏡。そういうわけでハードオフに鏡を探しに行きました。
 三百円。値札に驚く僕の目の前には思い描いていた大きな鏡。これはいいなあ、うははのは、と店員さんにこれ買いますというと店員さんは驚いた表情。
「この鏡はこの角度で見るとなんだか女性の影が見えたりするんですが、大丈夫でしょうか?」
 ためしにその角度で見ると、確かに女の子の影が見える。どうも黒髪ロングの小さな女の子のよう。僕の眼鏡の度があってないせいか、結構はっきり見える。
「あ、別に大丈夫ッス」
 僕はオカルト的なものは信じないし、別にいいやと買いました。大きな鏡だったので、持って帰るのに苦労しました。なんとかエイヤっと僕の部屋にレイアウト。玄関に近くて、風呂上りに見える位置。場所は最適。

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 何日か経って僕は、鏡を見ているとどうも女性の影が日々少しずつ動いている気がしました。原因はきっと、毎日風呂上りにいろんな所を丸出しで歩いていたりしてたせいでしょう。たぶん。そう考えると、だんだんと鏡に悪いことをしてきた気がしました。
 なので鏡をいたわろうと考えて、身に着けていたバスタオルで鏡を磨いたら、なぜか鏡の中から少女がでてきて言いました。
「悪い気がするならハダカのまま鏡を磨くな! ばかあっ」
 これが僕とカガミさんとの出会いでした。