ミケ

「わたしはだめだなあ」
「と、突然どうしたんだにゃ?」
「なんだか人と会話をしてると、やっぱり、わたしっていろんな人より劣っているだなあ、と思って。被害妄想だろうけど……」
「にゃにゃ、今更気づいたのかにゃ!」
「や、やっぱりですか」
「そりゃそうだにゃ。みんな無意識のうちに相手を比較してるもんにゃー。君はそういうことができないから、気づかなかったんだろうけど、社会的にはそういう仕組みだにゃんにゃ。君は見下されてるんだにゃ!」
「そ、そんな……」
「君は人の悪い部分をまだあんまり知らないみたいだにゃう。たとえば、よくかわいい女の子の隣と一緒に、ちょっと目立たない子がいたりするのを見たことあるかにゃ?」
「……あ、あるね」
「可能性で言うと、友達同士かもしれないし、親友同士かもしれないにゃ。でも、もしかしたら、かわいい女の子が自分を映えるように見せたいがために、一緒にいるだけかもしれないにょ。友達のフリしてるだけかもしれないにょ! もしかしたら、君が友達だと思っていても、相手はそうと思ってないかもしれないよ。友達のフリしてるだけかもにゃ」
「ええええええ」
「そういう世界だったりするんだにゃ。この世界は」
「う。うそー……」
「君は基本的に理想が高いにゃー。それは恋愛に限らず、すべてのことに言えるかもしれないにょ。この世は理想郷じゃないんだにゃー。少なくとも君の望む、完全な対等な関係を築くことなんてできないにゃん。だって、君は劣っているんだから。もしかしたら、劣っている君にも、ちゃんとした友達は、ほんのちょっとはできるかもしれないけど、多くの場合、みんな君を見下している。そういう感じだにゃ。対等なんて、無理だにゃん」
「うそだうそだうそだ」
「君が信じている世界はだんだんと崩れていくにゃ」
「うそだうそだ」
「そして君は社会に取り込まれる」
「うそだ」
「誰しもそうやって、大人になるんだ」
「うそだ! 僕は信じない」
「ま、裏切られるのが怖いくせに、君は、信じるんだから、まったく、バカだにゃー。ま、がんばれにゃ」