無題

 呪文のようにしあわせになりたいとつぶやき続ける少年はあっという間に大人になり、そのまま電柱に頭をぶつけて記憶喪失。目が覚めると病院のベッドの上で。「あなたはずっと眠っていたのよ」と椎名林檎の歌に出てくるような格好のナースはつぶやく。それを聞いた大人は窓から飛び降りて花壇をトマトケチャップで染め上げた。ゆえに、しあわせというものはトマトケチャップと隣り合わせなのだろうと、彼の人生を見ていた少年の家の隣に住む少女は思った。そして呪文のように、少年と同じように、しあわせになりたいとつぶやき始めた。