お知らせ

 ただいまサイトの全面改装作業を行っていますー。今月中(6月)には作業を完了させる予定です(もしかすると7月上旬まで延びてしまうかもしれないです。その時はごめんなさいです)。
 定期的にサイトが表示されないことや、表示に問題が生じる場合もあるかと思います。その際には、大変ご迷惑をおかけしますが、改装作業中だということで、ご了承いただければ幸いですー(ぺこり)。
 
 iPad/iPhoneのアプリiBookでの閲覧を想定した、実験的なePub形式ファイルです。たぶん、他のアプリとかでも見れるとは思うのですけれど、まだまだ勉強中なので自信がないです。
http://www.watakushi.info/murata.epub

 現時点では、iTunes上にファイルをドラッグなどしてiTunesのブックに追加してもらい、ブックの同期をしていただき追加することで見ることができますー。とっても面倒なので、手軽に追加ができ、読むことができるようにしたいと考えていますっ。
 また、今のところ本を読む感覚を味わえる以外に、サイト上でテキストを読むのとなんら違いがないので、もっとプラスアルファ(縦書きにしたりなど)ができるようにしたいと思います。がんばるです。

イラストレーター募集

 こんにちはー。お久しぶりですっ。山田相子です。
 早速なのですが、このたび、サイトの全面改装ならびにiPhoneiPad向けにePub形式でのサイトの更新データ配布のため、サイト上のイラストや挿絵などを描いていただけるイラストレーターの方を募集させていただくことにいたしました。
 応募方法については、お名前、作品とともにメールを送っていただく形になります(メールの送り先は、この記事の最後に記載しているメールアドレス先です)。
 作品については、作品のポートフォリオ、もしくは過去に関わった仕事が分かるもの、ウェブ上で作品を公開している場合でしたら、サイトアドレスなどです。送っていただいた作品を拝見させていただいて、サイトカラーや私の好みに合うかどうかで判断させていただく形になります。とても主観的な判断になりますので、仮に採用されなかったとしてもまったく気にされないでください(どの場合であれ、必ず返信いたします。1週間以上返信がない場合は、メールが届いてない場合などがありますので、その際はmelody@watakushi.infoに再度送っていただければ幸いです)。
 主なコミュニケーション手段は、基本的にはメールになります。必要に応じて、柔軟に対応させていただきます。
 ギャランティにつきましては、内容やスケジュールに応じて相談させていただきたいと思います。私は相場についての知識が無いので、もしも過去に商業的にイラストを描かれた経験などがありましたら、相談時に教えていただければ幸いです。
 以上になります。また、ご不明な点などありましたら、ご気軽にメールにてご質問していただければ幸いです。よろしくお願いいたします(ぺこり)。
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 メールの応募先:「watakushi@watakushi.info」
 件名は「イラストレーター募集について」でよろしくお願いいたします。

魔法の砂

「魔法の砂なんだって、これ」
 塩谷が持ってきた小さな瓶の中には、砂と言ってもトゲトゲしているものが入っていた。これって、星の砂じゃあ……。あたしはすぐさま、こいつ騙されたんじゃないの? と思ったけれど、言わないことにした。ひとまず、この人の話を聞いてからでもいいと思ったから。
「どうしたの? それ」
「なんかさ、さっき本屋からの帰り道にぶらぶら道を歩いていたら、露店を見つけて売ってあったのよ。美人のお姉さんが売ってた」
 それはどう考えても怪しい。あたしもついさっき、本屋の向こうの喫茶店から帰ってきたばかりなのに、帰り道にそんな露店なんて見かけなかった。この人はまったく、どこをどうぶらぶらしてきたんだろう。それに、そもそも、露店を見つけたからって、砂を売っているような、そんな怪しい露店に寄ることなんて、普通しない。ましてや、美人ならなおさらだ。
 そんな風にあたしが思っていることに気がついたのか
「いやー、お姉さんがさ、『そこのかっこいいバトラーさん、寄ってかない?』って、言うもんだから。おれ、ホント心底びっくりしてさ。いくらおれが執事服を着ているっていってもさ、バトラーって、普通言わねえよ、ほんと。びっくりした」
 それはびっくりするけど、それで店に近寄るあんたにあたしもびっくりだよ! 頭の中ですごく思ったけど、我慢がまん。
「へ、へえええ。そ、それで寄ったの?」
「寄った。近づいたらやっぱりすごい美人さんで、そりゃもう。なんか生きててよかったなあ、本屋で『モテる歩き方』って本、立ち読みした甲斐があったかもなあ、うははは、とか思ったよ」
 だめだこいつ。「そ、そう」
「で、お姉さんは、魔法の砂を売っててさ。まあ、そんなこんなで、お姉さんとお話しながら、これを買うに至ったわけなんだけれど、ともかく、これをみいちゃんにあげよう」
 どうして買うに至ったのか、まったくわからない。それにあげようと思っている理由もまったくわからない。
「え、ど、どうして? よくわからないんだけれど」
「魔法の砂を持っているといいことがあるんだってさ。だから」
 あたしはよくわからないけれど動揺した。だからつい口を挟んで
「だったらあんたが持ってたらいいじゃない。あたしはいらない」
「まー、えーと、その、なんというか。おれが持っててもなあ。おれは毎日いいことばかりだからなあ。うはは。みいちゃんに相ちゃん、二人と一緒に毎日楽しく仕事できてるし。うん。これは日ごろのお礼みたいなものなのよ。うん。いつもありがとう」
 なんかよくわかんないけど、負けた気がした。
「う、相子のもあるんでしょうね。ちゃんと」
「もちろん」
「ちゃんとあげてよね」
「もちろん」
「……ありがと」
 あたしは砂が入った小瓶を受け取りながら、何となく魔法を感じた気がした。

イチゴショート

 近所の喫茶店にて、カウンター席に座りココアを注文すると、後ろからみいちゃんに話しかけられた。「久々に、見た。何してたの、最近」「いつもと変わらず家でぼんやり研究したり、本を読んだり、だらだらしたり、かな」「へー、そうなんだ。あんまり家から出ないの?」彼女はコーヒーのお代わりをマスターに注文しつつ「不健康的だから、たまには出るようにしたほうがいいよ、ここにくるだけでも運動になるだろうし」ぼくは、そうだなあ、としみじみ思った。「うん。ちゃんと来ます」「うん。おけ」ブラックコーヒーをよく飲めるな、とぼくは感心する。
 カップをマスターから受け取った彼女は、それを察したように「別においしくないよ。雰囲気ふんいき」と言った。「前に、たまたまブラック飲んでたら、相子が『みいちゃんかっこいい!』って目をキラキラ輝かせてたもんだから、ま、そういうことかな」にやり、と笑ってカップに口をつけた。
 テーブル席に座っているみいちゃんは、近所の大きな屋敷に住むメイドさんだ。かわいらしいメイド服を、とても格好良く着こなしている。格好良く思えるのは、彼女の凛とした雰囲気のせいかもしれない。彼女の栗色の髪は、外から入ってくる夕日に照らされて、キラキラと輝いている。
「髪、伸ばそっかな」彼女は一人ごちた。「でも伸ばすとめんどくさいし、うーん」ぼくは余計なことだと思いながらも「ぼくは、今のみいちゃんの髪型好きだけどな。短いの」「そっか。ありがと」そう答えて、彼女は窓の外の方を向いた。
 なんとなく、彼女が考え事をしているような気がしたので、ぼくはこっそりとイチゴのショートケーキを二つ注文して、一つを彼女にあげることにした。「おひとつ、どうぞ」「えっ、なに。これ食べていいの?」「うん。どうぞ」彼女は戸惑っているみたいな表情を見せた。そして、少しの間ぼくの目をじっと見た後「お、お言葉に甘えます。ありがと」ぺこりとお辞儀をして、とびっきりの笑顔を見せた。彼女の笑顔が、ぼくはすごく好きだ。
 ぼくは好きなものは最後に食べる方。だから、イチゴは出来るだけ最後まで残す。ふと振り返って彼女の方を見ると、彼女も同じような食べ方をしていて、なんだか面白いな、とぼくは思った。

レイヤー

 わたしはものがよく見えません。正確に言うと、それが本当にそれなのか、あまり判断がつきません。きっと、たぶん、それだって思うけど、自信がなくて、間違ってたら嫌だな、っていろいろ考えてしまいます。考えているだけで、勇気がなくて。
 わたしが見ている世界は、誰もが見ている世界とはちょっと違っています。見えちゃいけないものだって見えてしまって、たとえば、幽霊だったり、天使だったり、悪魔だったり。神様だったり。人の思っていることとか、心の中も見えました。人より多くのものが見えてしまうから、判断に困ることもよくあります。
 でも、見えなきゃいいのにな、って思ったことは一度もありません。一番の理由は、わたしはわたしのことが好きだからです。このまま、見えるわたしで、いいと思っています。
 今日、わたしは勇気を出して話しかけてみました。たぶん、あなたはわたしの思ったことが見えていると思います。はじめまして。

ミケ

「わたしはだめだなあ」
「と、突然どうしたんだにゃ?」
「なんだか人と会話をしてると、やっぱり、わたしっていろんな人より劣っているだなあ、と思って。被害妄想だろうけど……」
「にゃにゃ、今更気づいたのかにゃ!」
「や、やっぱりですか」
「そりゃそうだにゃ。みんな無意識のうちに相手を比較してるもんにゃー。君はそういうことができないから、気づかなかったんだろうけど、社会的にはそういう仕組みだにゃんにゃ。君は見下されてるんだにゃ!」
「そ、そんな……」
「君は人の悪い部分をまだあんまり知らないみたいだにゃう。たとえば、よくかわいい女の子の隣と一緒に、ちょっと目立たない子がいたりするのを見たことあるかにゃ?」
「……あ、あるね」
「可能性で言うと、友達同士かもしれないし、親友同士かもしれないにゃ。でも、もしかしたら、かわいい女の子が自分を映えるように見せたいがために、一緒にいるだけかもしれないにょ。友達のフリしてるだけかもしれないにょ! もしかしたら、君が友達だと思っていても、相手はそうと思ってないかもしれないよ。友達のフリしてるだけかもにゃ」
「ええええええ」
「そういう世界だったりするんだにゃ。この世界は」
「う。うそー……」
「君は基本的に理想が高いにゃー。それは恋愛に限らず、すべてのことに言えるかもしれないにょ。この世は理想郷じゃないんだにゃー。少なくとも君の望む、完全な対等な関係を築くことなんてできないにゃん。だって、君は劣っているんだから。もしかしたら、劣っている君にも、ちゃんとした友達は、ほんのちょっとはできるかもしれないけど、多くの場合、みんな君を見下している。そういう感じだにゃ。対等なんて、無理だにゃん」
「うそだうそだうそだ」
「君が信じている世界はだんだんと崩れていくにゃ」
「うそだうそだ」
「そして君は社会に取り込まれる」
「うそだ」
「誰しもそうやって、大人になるんだ」
「うそだ! 僕は信じない」
「ま、裏切られるのが怖いくせに、君は、信じるんだから、まったく、バカだにゃー。ま、がんばれにゃ」

カガミさん

 金魚を一匹買うときは水槽の近くに鏡を置いておくとよいといいます。金魚は鏡に映った自分を、お友達だと思ってさびしくなくなるから。

*

 僕は無性に鏡がほしくなったのです。こう、全身が写せる大きなおおきな鏡。そういうわけでハードオフに鏡を探しに行きました。
 三百円。値札に驚く僕の目の前には思い描いていた大きな鏡。これはいいなあ、うははのは、と店員さんにこれ買いますというと店員さんは驚いた表情。
「この鏡はこの角度で見るとなんだか女性の影が見えたりするんですが、大丈夫でしょうか?」
 ためしにその角度で見ると、確かに女の子の影が見える。どうも黒髪ロングの小さな女の子のよう。僕の眼鏡の度があってないせいか、結構はっきり見える。
「あ、別に大丈夫ッス」
 僕はオカルト的なものは信じないし、別にいいやと買いました。大きな鏡だったので、持って帰るのに苦労しました。なんとかエイヤっと僕の部屋にレイアウト。玄関に近くて、風呂上りに見える位置。場所は最適。

*

 何日か経って僕は、鏡を見ているとどうも女性の影が日々少しずつ動いている気がしました。原因はきっと、毎日風呂上りにいろんな所を丸出しで歩いていたりしてたせいでしょう。たぶん。そう考えると、だんだんと鏡に悪いことをしてきた気がしました。
 なので鏡をいたわろうと考えて、身に着けていたバスタオルで鏡を磨いたら、なぜか鏡の中から少女がでてきて言いました。
「悪い気がするならハダカのまま鏡を磨くな! ばかあっ」
 これが僕とカガミさんとの出会いでした。