無題

 ぼくには好きな女の子がいて。
 その子が自分の男友達の家に行くということを知り、ぼくは様々な想像を働かせてしまった。なぜなら、彼女がその男を好きだということ。以前にそういう出来事があったということ。
 直接的にそれが何かを言う気はさらさらないけれど、導き出される可能性は嫌な想像だった。けれど、だからといってぼくには彼女が友達の家に行くことを止める権利なんか無い。友達同士、仲良くしているのも良いと思う。ぼくはどうしようもないことを理解しながらも、気分は最悪だった。
「何もなくてしょんぼりした。励まして」
 彼女からの電話にぼくはどうしようもない気持ちになった。何もなくて? 何を期待して行ったの? それをぼくが励ます? 励ます? 励ます? 出来るか? 出来るわけない。頭の中で「人の気も知らないで」という言葉が繰り返される。いいや、そんな気なんて余計なお世話に他ならない。彼女が何をしようがぼくにそれを止める権利なんてないのだ。
 なのに、ぼくは、ぼくは、ぼくは。