天敵

 生きる上で誰しも天敵というものは存在していて、わたしの場合、やつこそが天敵であると思っている。やつがこの世にいるだけでわたしの心は憎悪で満たされて、普段はその憎悪を押さえようとする理性が瞬間的に万力で押しつぶされる感覚に陥る。そういうわたしはうんざりしてしまうし、やつを天敵と認識してしまった自分にもうんざりする。
 見えない天敵のままで一生を終える人も多い。それが普通なのだから。
 出来る限りその天敵からわたしは逃れたいと思う。けれど、人には動くことの出来ない立ち位置というものは必ずあるがゆえ、もうやつから逃れることは出来ない。どちらかが消えるまで。割り切れるようになるまで。わたしの戦いは続く。