疑似閉鎖空間

 朝起きて冷蔵庫を開けると魚肉ソーセージがあったので食べた。一本ではもの足りないから二本目を口にして、あー、ダイエットしなきゃだった、とわたしはもぐもぐしながら、うんざりする。
 まず、テレビとパソコンの電源を入れる。次に、一日中つけっぱなしにしているエアコンの温度を25度から22度に下げて、少しだけ地球に貢献した気分になる。そうして机の上に散乱したハイレモンから一粒のタブレットを取り出して食べる。酸っぱいのでよだれがジャージャーでる。おいしいからいいけど。
 わたしはいつものように入り口のポストに中途半端に入れられた新聞をわざわざ扉を開けて取る。そのとき初めて外の空気を吸って、外の具合に気づく。
 そうして少しだけ、なぜかわからないけど、ため息をして、適当に放置していた下着を洗濯機に投げ込んで洗濯を開始する。ぐおんぐおんと動き始める洗濯機からは、何となく洗濯をするのがめんどくさそうな感じがして、好き。
 歯を磨きながら、鏡に映る自分の顔に酷い顔だとずっと思う。肩まで届いた長い髪をどうにかしなきゃね、と考えながら、美容室に予約を入れるのにも未だに慣れないわたしは社会に適応できるのかしら、って考える。わかんないけど。知らないけど。適当に髪をまとめる。
 わたしは、メールをチェックして、いつものように英語の論文とにらめっこをする。あー。面白いけど疲れちゃうよ。助けてダーリン。ラムちゃんじゃないのに、ふとそういうことをぼやくわたしに、ないなあ、ないなあ。自分にげっそりする。
 外に出ないのに何も起こるはずはなくて。いつまでもわたしはとらわれのお姫様みたい、なんてポジティブに考えるにはいい加減わたしも歳を取りすぎた。もう、わたしはお姫様じゃない。よくて、いじわるばあさんかもね。
 大きくため息をついた。