過去と現在と未来と

「ぼくには何が必要なんだろう」
「それはちょっとした休暇と、少しぬるめのコーヒーだろう」
 数年前のぼくはぼくをやつれている、と評価した。ぼくは「そうかな」と考える。
 ぼくはいつものようにチョコレートパフェを注文し、数年前のぼくは季節限定の栗のパフェを注文した。甘党に悪い奴はあまりいない。まあ、これってかなり適当なんだけどさ。
 時々ぼくは自分がどういう人間なのか、よくわからなくなる。それは自分の存在理由であったり、生きる目的、であったり。自分を構成しているすべてがわからなくなる。だからぼくは一人時間をさかのぼる。時系列にそって存在するぼくをシミュレートする。だから彼はぼくの目の前に、いる。
 ところで。どれが正しくて、正しくないのか。正しいものなんてない現実に、自分というフィルターをかけて見ると途端にそれらの選択肢が生まれる。それが果たしていいのだろうか。決まってる。悪い。だけれど、そうしてしまう部分が自分の中にあるって知っているから、ぼくはとてつもない自己嫌悪感にとらわれる。死んでいまいたくなる。実際には死なないんだけどね。
「ぼくはこのままでいいんだろうか」
 ぼくはパフェを頬張りながら尋ねる。
「別にいいと思うよ。少なくともぼくは、だけど」
「そうか」
 ぼくは答えなんて別に求めてない。そのことを彼はよく知っている。
 だから結局彼の存在なんて別に必要はない。けれど、いてくれると安心する。
「未来のぼくはどうなってると思う? しあわせかな。良くなっているかな」
 ぼくは過去の自分に問いかける。
「しあわせで良いようになっているかもしれないし、なってないかもしれない。けれど、おれはしあわせでなくて、良くなっていない方に、一万円賭ける」
「ははは」
 君の未来は、今の君よりずっと良くなっている。けれど、ぼくは今落ち込んでいる。それもとてつもなく。だからしあわせではない、と言える。
 でも、すべては瞬間しゅんかんすべて変化している。変化する。だから、今のぼくが今この次の瞬間にどうなっているかなんてわからない。だから何なんだと言われても、ぼくにはわからない。ただそういうものだって、ぼくは思っている。
 ぼくのことなのに、誰も、ぼくでさえも、ぼくがわからない。