idVENTURE

 どこかで見たidにぼくは思いを馳せながら、君はどこの誰だったかとパソコンの前で思い出そうとする。そう簡単には思い出せない。
 デジャビュ的なものかもしれないから、しっかり考える必要がある。何となく見たことがある、そういうのじゃあ、だめなんだ。ぼくはコーヒーを飲み干し、神経を集中する。
 idからわかる字体のバランス。それはその人固有のものであり、独特のものだ。だから、それを何となく、で片付けるわけにはいかない。特別なものであることをぼくはしっかりと理解している。
 記憶を探り、自分の中を冒険する。どんなに混沌としている場所でも、かならず綺麗な道はある。それを必死に探す。すべてが裏付けされた道を。一筋の光り輝く道を。
 もちろん、どんなに裏付けされた道であろうと、その道が見つかる、しっかりとした裏付け、筋書きなんてものはない。よくある映画の主人公みたいに、すべてが最終的にうまく行くことは少ない。けれど、だからといって悲観する必要も、また、ない。だれもそれで責めたりしない。
 ぼくはぼくなりに君を思い出す。ただ君とすれ違っただけかもしれないけど、物覚えが悪いぼくが覚えているんだ。きっと君はどこかにいる。
 ただただぼくは、君の存在を、ぼくの中に、確かめたい。