夢の中で

 眠い時は決まってソファーで寝てます。起きたときに髪はぼさぼさになってしまって、とても困ってしまうのですけど、ついつい、ふかふかのソファーで横になっていると、寝ちゃうのです。暖房の効いている部屋で、ぽかぽか。あったかいのです。
 夢に落ちると、決まって遠い昔の思い出の中に放り出されます。昨日は、神社に一人、厚着をして、おみくじを引きに行ったときのことを夢で見ました。あのときは、わたしは中学生で、来年高校受験でした。受験シーズンまっただ中だったので、いえ、そうじゃなくても、わたしにはずっと彼氏がいなくて、なんだか寂しくて。好きな人もいなかったから、いつ素敵な人と巡り会えるのかなー、なんて勉強しながら思っていました。
 ある朝にふと神社でおみくじを引いたら、それがわかるじゃないかって思って、今だとなんだか恥ずかしくなっちゃうけど、待ち人とか、恋愛のこととか、知りたくて、神社に向かったのです。本当に朝早くだったので、外はとても寒かったです。山奥にある神社へ、真っ白な霧の中を通って行きました。ほんの少しの先も見えないのに、なぜかそのときは使命感みたいなのがあって、怖くなったのを覚えています。不思議ですよね。今だときっと無理かもです。
 賽銭箱にお金を入れて、もちろん5円です。ご縁がありますように、って。良いことがありますようにー、ってお願いとかもして、その後おみくじを引きました。大吉でした。なんだかうれしかったです。待ち人の欄は、来る。恋愛の欄は、誠意を尽くせ、でした。わたしは、そうかーそうかー、って朝日を見ながら思いました。未来に思いをはせました。ちょっと顔がにへらってしてたかもです。いえ、してました。
 昨日はそこで目が覚めました。くしゅん。ソファーで寝てたせいか、ちょっぴり汗をかいてしまったので、すぐに着替えました。風邪を引きやすいので困ります。そして、お水を一杯飲んで落ち着きました。
 いまだにわたしには待ち人は来ないし、誠意を尽くす相手もいないけど、いつかきっとくると思って、中学生だったあのときみたいに、わたしは未来に思いをはせています。

男って

 だから男って最悪、ってあたしはよく思う。それは、もともと男って本当に馬鹿だって思っているからだし、もちろんそれがすべての男の人に言えるとは限らないけれど、大部分言えることは経験上、たぶん正しい。特に、一番あたしが嫌いなのは実現不可能な理想を語る男。理想だけで飯が食べられるのかっていうのよ。ほんと。理想をたくさん女の前で並び立てたら女は喜ぶって平気で思ってる。とても馬鹿だ。そんなに世の中甘くないってわかってないのかしら? わかってるけど目をそらしてる? いい大人なんだから現実見てよって感じ。はー。ため息が出ちゃうわ、ほんと。ため息をつくたびに、福を逃してるのかもしれない。はーはーはー。巡り巡っていつかは福が戻ってきますように。
 なんてね。

村田みい「相子の電話」

「プルルルルル……ぴ。はいもしもし、あ、相子ー? うん。どしたー? あたしは今ね、晩ご飯の材料買った所だよ。うん。もうちょっとで着くかなー。ん? それはいいんだけど、相子なんか声が震えてるよ。どしたの? 大丈夫? うん、うん、なになに? メリーさん? ひっつじ、ひっつじ、のひつじ? そのメリーじゃない? 違う? うん。へええ。ネットで怖い話を見た? 相子怖いの苦手なのにどうして……あー、あはは、気になる? うん、確かにまあねえ。あたしもヒツジだって思ったし、確かにメリーさんの電話ってあったら気になるわね。ヒツジが電話してきたら会話になるのかしら。わかんないけど。それで、メリーさんの電話って何? うん、へー、昔捨てた人形が夜中に電話してくる? うん。『あたしメリーさん。今ゴミ捨て場にいるの……』って? その後も電話がかかってきてだんだんと家に近づいてくるんだ。『あたしメリーさん。今あなたの家の前にいるの』って? それで玄関を思い切って開けてみるけど誰もいなくて。いたずらだって思うのね。うんうん。安心するね。いたずら怖いね。え、なのにまた電話がかかってきて……『あたしメリーさん。今 あなたの後ろにいるの』って……、あ、あは、あはは、ちょ、ちょっとびっくりしただけだよ。怖くないよ。うん、うん、大丈夫だいじょうぶよ。そんな怖がらなくても。うん。今から急いで帰るから、ホット牛乳でも飲んでWii Musicでもしてて。うん。またねー」
 メリーさんかー……想像してみるとあたしは少しだけぞくっとした。メリーさんをフランス人形的なのと思っちゃったせいかな、と思う。やだなー。相子が怖くなるのもわかるな。うん。しみじみ感じつつ、ふと相子がメリーさんみたいに電話してきたらどうなんだろうな、って考えてみた。
 んー……。相子かわいいし、面白いかも。なんて。
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塩谷シュガー「みいっみいっ」

「みいっみいっにしてやんよ!」
 ちょっと言いづらいな、と感じつつも、テレビでピタゴラスイッチDVDを見ながら、おれはふと考えてみた。ところで、みいっみいっにされるって、何をされるのだろう。……ふむ。
 いろいろ考えてみると、なんだか顔がにやけてきたぜ。
 うひひ。毎日がごちそうです!

過去と現在と未来と

「ぼくには何が必要なんだろう」
「それはちょっとした休暇と、少しぬるめのコーヒーだろう」
 数年前のぼくはぼくをやつれている、と評価した。ぼくは「そうかな」と考える。
 ぼくはいつものようにチョコレートパフェを注文し、数年前のぼくは季節限定の栗のパフェを注文した。甘党に悪い奴はあまりいない。まあ、これってかなり適当なんだけどさ。
 時々ぼくは自分がどういう人間なのか、よくわからなくなる。それは自分の存在理由であったり、生きる目的、であったり。自分を構成しているすべてがわからなくなる。だからぼくは一人時間をさかのぼる。時系列にそって存在するぼくをシミュレートする。だから彼はぼくの目の前に、いる。
 ところで。どれが正しくて、正しくないのか。正しいものなんてない現実に、自分というフィルターをかけて見ると途端にそれらの選択肢が生まれる。それが果たしていいのだろうか。決まってる。悪い。だけれど、そうしてしまう部分が自分の中にあるって知っているから、ぼくはとてつもない自己嫌悪感にとらわれる。死んでいまいたくなる。実際には死なないんだけどね。
「ぼくはこのままでいいんだろうか」
 ぼくはパフェを頬張りながら尋ねる。
「別にいいと思うよ。少なくともぼくは、だけど」
「そうか」
 ぼくは答えなんて別に求めてない。そのことを彼はよく知っている。
 だから結局彼の存在なんて別に必要はない。けれど、いてくれると安心する。
「未来のぼくはどうなってると思う? しあわせかな。良くなっているかな」
 ぼくは過去の自分に問いかける。
「しあわせで良いようになっているかもしれないし、なってないかもしれない。けれど、おれはしあわせでなくて、良くなっていない方に、一万円賭ける」
「ははは」
 君の未来は、今の君よりずっと良くなっている。けれど、ぼくは今落ち込んでいる。それもとてつもなく。だからしあわせではない、と言える。
 でも、すべては瞬間しゅんかんすべて変化している。変化する。だから、今のぼくが今この次の瞬間にどうなっているかなんてわからない。だから何なんだと言われても、ぼくにはわからない。ただそういうものだって、ぼくは思っている。
 ぼくのことなのに、誰も、ぼくでさえも、ぼくがわからない。

トロイメライ

 だれかだれかだれかだれかだれかと助けてと声を上げてみても、だれもだれもだれもだれもだれも助けてくれない。それがきっと運命。ぼくはいつだって誰かに甘えようとしていた。そんなことしても意味がないのに。
 意味がないとわかっていても往々にしてしてしまうこともある。救いを求めてしまうこともある。でも結論はいつも変わらない。人はいつだって孤独だということだ。誰しもだれしも。
 そうわかっていても、納得できてないから、こんなにもぼくは苦しいんだろうな。ぼくは綺麗な世界の夢を見る。